ノールック書道の墨の一筆
紙の上に伸ばされた手と素足
制作後の椅子と紙に差し込む光

No-Look Calligraphy

About the Project

見えないという自由。The freedom of not seeing.

ノールック書道は、先天的に全盲の視覚障害者による、まったく新しい書のジャンルです。視覚に頼らず、身体の感覚と内なるイメージだけで筆を走らせる。その筆致には、純粋な身体表現としての力強さが宿っています。

No-Look Calligraphy is a new genre, created by artists who have been blind since birth. Without sight, the body writes. Sensation and inner vision guide every stroke — a power the eye cannot correct.

まずは丁寧に、手で紙に触れる。

素材や大きさ、全体像をつかむ。

First, gently — the hand meets the paper.

Sensing its material, its size, its whole.

紙に触れる手と傍らに置かれた筆
紙の上に立つ素足
紙の上に立つ素足と紙を整える手

準備が整ったら、視覚に頼らず、

身体と感覚だけで筆を走らせる。

Once everything is ready, the brush moves without sight,

guided only by body and inner sense.

墨の入ったバケツを支える複数の手
大筆を握り太い線を引く手
紙の上に残された筆あとと素足
筆から墨を勢いよく撒く瞬間
筆と墨の塊のクローズアップ
紙面に広がる墨の抽象的な痕跡
完成した作品に添えられた手
制作後の椅子と紙に差し込む光

Policy

PROLOGUE / 2026-

序章──黎明期

ここに並ぶ書は、すべて「黎明期」のものです。

書き手たちは今、「型」を知る前に、筆が紙に触れる「筆触」そのものを模索し、楽しんでいます。まずは、書を好きになってもらいたいからです。

そのために黎明期の間は、あえてしないことがあります。

ディレクションをしない。

書き方を指示せず、本人の身体から出る線をそのまま残します。

セレクションをしない。

見える人が見える人の基準で「良い書」を選ばず、生まれた書は基本的にすべて掲載します。

墨を立体にしない。

完成した書に本人たちが触れられるよう、書を立体的にする工夫ももちろん検討しました。ただ今の彼らは、結果よりも、書くプロセスそのものを楽しんでいるように見えること。そして書く墨そのものを盛り上げれば、筆の走りが変わり、いまの伸びやかな運筆の生命感を損なうことも危惧しています。完成した書を後から立体化する道もありますが、視覚の表現をそのまま凸にしても、触れて伝わるとは限りません。触覚での鑑賞は、丁寧に設計したい課題として残しています。良いアイデアがありましたら是非教えてください。

NEXT CHAPTER

これから──型との出会い

黎明期の「次の時代」についても検討を始めています。

これからのノールック書道は、少しずつ「型」と交差していく予定です。筆触が豊かになるような手ほどきを行う。あるいは、達筆のリズムを音に写しとった「書の楽譜」による耳でなぞる練習など。見えない書き手だからこその、新しい稽古のかたちを模索していきます。

その過程で、墨が触れられるものになるかもしれません。ディレクションが入るかもしれません。作風も変わっていくでしょう。

自由から始まり、型と出会い、その先で新しい自由を得る。
ノールック書道は、その大きな流れのまだ序盤にいます。

書家Calligraphers

Kento

KENTO

身体全体を使った大きなストロークから大胆な作品を生み出す。幼少期に触れた大筆と紙の筆致に魅了され、書が大好きな遊びとなった。
先天性白内障、小角膜小眼球により角膜摘出、先天性全盲。

Junsei

JUNSEI

繊細なタッチ、ゆっくりとした動きで、思わぬ構図の作品を生み出す。筆が紙に触れる感覚が好き。
左目が網膜ひだ、右目が網膜異形成。先天性全盲。

監修Supervisor

葵雋卿Shunkei Aoi

書道家・葵香嵐を母に持ち、大東文化大学を経て杉山聴雨に師事。竹鶴酒造「竹鶴」ラベルや映画『蜩ノ記』の書道指導など、伝統と現代を架橋する揮毫を手がける。書道教室 cacotto 主任講師、2024年に LOTUS 書道 studio 開講。震災支援や視覚障害者への書道支援にも長く取り組む。ノールック書家KENTOの父。

プロデュースProducer

澤田智洋Tomohiro Sawada

コピーライター。ノールック書家JUNSEIの父。授業参観の際に目撃した盲学校の子どもたちが書いた書に心を奪われ、このエネルギーと圧倒的な自由こそ今の社会に必要だと感じ、ノールック書道を企画。

コラボレーションCollaboration